陽の章 五禽戯


2「気」と「気功」

 「五禽戯」が「陰陽五行」の理論によって作られていることは理解しましたね。その「陰陽五行」という古い教えは、その根本に「気」の理解があるのです。

 第一章で「気」は電気のようなものだと簡単に説明しましたが、五禽戯のエクササイズの紹介の前に、やはり、「気」って何なんだろうとか、「気功」ってどんなもんなんだろうということをもう少し理解しておくべきでしょう。

 『「気功」?ああ、呼吸法ですね!』というように言う人がいます。それは間違いではありませんが、しかし正しい理解ともいえません。

 「気功」の「功」という字に
1トレーニング
2技術
3能力
という意味があります。

 つまり「気功」とは「気」のトレーニングです。「気」をコントロールする技術です。そのトレーニングを一定期間実践するとその人は「気」の能力を身につけます。その能力を身につけた人を「功夫(かんふー)」と呼びます。

 一般にはカンフーというと「カンフー映画」があるように、中国武術のことですね。

 あの人には強い「カンフー」があるという言い方もあります。中国武術を長年修行した人には、強力な「気」の能力が備わっています。そのため中国武術もカンフーと呼ぶようになったのでしょう。

 トレーニングというと一般的に、エキスパンダーを引っ張ったり、バーベルを持ち上げたり、ストレッチしたり、走ったり、飛んだりというような荒い呼吸をして汗を流すようなイメージと運動を連想するでしょうが、「気」のトレーニングというのは、そのような即物的なな、つまり「ただ体を動かせばいい」というようなトレーニングのイメージとはやや異なります。

 「気功」は古い時代には、「導引法」とか「吐納法」または「仙術」などと呼ばれていました。さらにいえば、俗界を離れ、ひそかに深山で行なわれていたような「霞を吸って生きていた」仙人たちの行っていた行法を一般化したものなのです。

 「気功」と呼ばれ始めたのはそれほど古くなく、一時代前の中国、毛沢東の時代1957年に「国家体育運動委員会」の指示のもと、「人民の体位向上のために」という名目で気功と太極拳が奨励されました。

 その時期、劉貴珍(りゅうきちん)老師が『気功療法実践』という本を出版して、「気功」という名前が一般化されました。同じ時期に「簡化24式太極拳」も制定され、中国全土に広がっていきました。つまりまだまだ、半世紀ほどしかたっていないのです。
 

 
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